こんな商品が欲しかったんです!
『京月窯』窯主 近藤京子さん(福島市)


2011年の震災後、福島市飯坂町に移住し、『京月窯』を再開した第15代目当主の近藤京子さん
「窯おんど」が近藤さんの作品作りにどのようにお役にたっているのか伺ってきました

今回ご紹介するのは『近徳 京月窯(きょうげつがま)』第15代目当主の近藤京子さん。 元々は相馬焼の発祥の地である、福島県双葉郡浪江町で窯元を営んでいましたが、 2011年の原発事故により避難を余儀なくされ、現在の福島市飯坂町で京月窯を再開しました。 古民家を改造した趣のあるギャラリーに並ぶ作品は、釉薬の色や器の種類も豊富。 大堀相馬焼の伝統に則ったものから、女性陶芸家らしい繊細で優しい風合いの作品も多く、 「1日24時間ではなく、36時間くらい欲しい」と、創作意欲の尽きない近藤さん。 京月窯での作業はすべて1人でこなしています。 窯の温度管理は、何昼夜に及ぶこともありますし、ギャラリーで接客の際も気にしなければならず、 何とか母屋やギャラリーに居ながらにして、工房の窯の温度を見ることはできないかと、 窯を購入したシンリュウさんに相談したところ、『窯おんど』を紹介されたとのことです。 『窯おんど』が近藤さんの作品作りにどのようなお役にたっているのか知りたく、今回は福島県までご訪問。 素敵な器に囲まれ、楽しいお話しを聞かせていただきました。

京月窯 近藤京子さん(福島県)

大堀相馬焼窯元 『近徳 京月窯(きょうげつかま)』
 窯主:近藤 京子
 住所:福島市飯坂町平野字道南4
 TEL:024-542-2818
 営業時間:9時~18時(不定休)
 窯タイプ:電気窯、ガス窯

近藤京子さん プロフィール
 1956年 福島県双葉郡浪江町生まれ
 1976年 大堀相馬焼窯元『京月窯』第15代継承
 2011年 東日本大震災・原発事故により福島市に避難
 2011年 福島市飯坂町地内に新窯を築窯
 2015年 電気窯他、設備増設
 2017年 ギャラリー兼居宅をリフォーム

京月窯様での利用例

【構成図】工房内のガス窯に接続している、デジタル温度表示器の端子に窯おんどの補償導線を接続。 焼成を行う際には、計測装置(赤)の温度計測を『開始』とする。計測が開始されると、計測装置から計測データががギャラリーに設置している青のサーバ装置へ、WiFIでデータを送信。 サーバ装置がデータを受信し、サーバと接続しているスマホ、タブレット、PCに温度が表示される。

いよいよ困って、カメラとPCでお手製の監視システムを作ろうか考えていたほどでした
工房とギャラリーを行き来する日々から開放! こんな商品を待っていました。


「福島の冬は想像以上に寒いんですよ」と笑いながら仰る近藤さん。 近藤さんは、窯とギャラリーを1人で切り盛りしているので、窯につきっきりでいられないこともしばしば、 日に何度も、母屋、ギャラリー、工房間を行ったり来たりしていたそうです。 それでも、温度上昇時に一瞬のタイミングを逃し、作品をダメにしてしまったことや、想定温度かと思い工房に行くと、まだ温度に達しておらず引き返したり、また見に行ったり・・・を繰り返すこともあり、これが、深夜や明け方ともなると、ガス窯の焼成時の温度管理作業は身体的にかなりハードになるそうです。"火(温度)”と格闘することは、陶芸家にとって大きな醍醐味でもありますが、温度監視にはこれまで大変苦労されていたようです。
そこで、工房の窯の温度監視を何とかしたいと思い、窯の温度を遠隔監視できる装置を探し始めたそうなのですが、思い通りの商品が見つからず、いよいよあきらめて、 ご主人がPCとカメラを使ってお手製の監視システムを作ろうか考えていたときに、シンリュウさんから『窯おんど』を紹介されたそうです。
「窯おんどが来てからは、敷地内全域でWiFiがほぼ届くので、いつでもどこでもスマホやタブレットで温度確認が出来るようになり、作業効率も断然上がりました! 思っていた通りの商品で大変満足しています」と仰っていただきました。


『窯おんど』のお陰で作業効率も上がり、陶芸とお客様対応にこれまで以上に専念できます。


訪れたお客さまとお話することが大好きという近藤さんのギャラリーには、 作品を買いに来られるお客様だけではなく、ご近所の方々、浪江町から避難してきた方などが集う憩いの場にもなっているようで、 我々が取材している際にもご近所にお住まいのご夫婦が立ち寄られ、近藤さんが入れるコーヒーで一服、という場面も。
何気ない会話から、新しいアイディアやイメージが浮かぶこともあるとのことで、近藤さんにとってのお客様対応は、次なる作品へと繋がる大切な時間。 『窯おんど』が来る前は、焼成をはじめると、窯の温度が気になり、落ち着かないこともありましたが、『窯おんど』購入後は、スマホやタブレットで窯の温度をいつでも見ることが出来るようになり、お客様のお相手にも気持と時間の余裕を持てるようになった、といっていただきました。


私の器たちによって、アクセントのあるバラエティに富んだライフスタイルが演出できれば幸いです


大堀相馬焼の窯元である京月窯ですが、そもそも大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)とは、 福島県浜通り北部の浪江町大堀で焼かれる陶器のことを言い、300年以上続く国の指定伝統工芸品です。 「青ひび」と言われ、ひび割れが地模様となっている器に、 荘厳な「走り駒」が描かれ、「二重焼」という珍しい構造が大きな特長。


第15代当主として、大堀相馬焼の伝統を継承したことについて、どうお考えなのか伺ったところ、 「特に強く意識したということはありません。陶芸ということでいえば、先祖代々やってきたことは皆同じ。 だけれど、土台があったからこそで、ご先祖様がやってこられたことをないがしろには出来ませんし、 心の中でいつも感謝しています。そういう気持ちは忘れないようにしています。 と同時に、新しいことへの挑戦も続けていきます」と力強く語ってくださいました。

確かに、近藤さんの作品には、伝統的な相馬焼の陶器に加えて、女性らしい優しい色使いやフォルムの作品も多く、 ギャラリーには、近藤さんならではの感性が光る独特の淡いピンクや青色のコーヒーカップやお茶碗、 ランプシェードや花瓶、茶器、また、逆に目の覚めるような鮮やかな色合いの陶器など、1000点以上の商品が並んでいます。


「自分で使いたいものを作るように心掛けています」と近藤さんは言います。 続けて、「モチーフとして常に意識していることは、生活に密着した…あるいは生活に根付いた作品で、 従来の既成概念にとらわれない器の使い方…言い換えれば、女性独特のちょつぴりいたずらっぽい”遊び心”を日常生活空間に取り入れてほしいのです。 私の器たちによって少しでも皆様の生活にアクセントのあるバラエティに富んだライフスタイルが演出できれば幸いと存じます」とも。近藤作品に『窯おんど』がお役にたてていると伺い、大変嬉しい気持になりました。


【編集後記】今回、窯おんどの話しから、陶芸にまつわる様々な話しをしていただきました。そのなかのひとつに、近藤さんが幼少時代、登り窯の窯焚きは女人禁制だったという話しがありました。東京に戻ってから調べてみると、一説には『窯の神様は女性なので、女性が近づくとヤキモチを妬いてしまうから』とあり、現在では女人禁制ということは無いのでしょうが、歴史ある、伝統の世界なのだと改めて感服しました。
最後に近藤さんへ、「陶芸人口が年々減少していることについてどう思われますか」と質問したところ・・・、 「陶芸を志す人などいらしたら、ここには全て揃っています。是非ここを自由に使ってほしい」と、近藤さんらしい温かいメッセージをいただきました。 実は当初、女性で第15代目の当主と聞き、ちょっぴり恐いイメージを(勝手に)抱いていました(ごめんなさい)が、 実際にお会いした近藤さんは、物腰の柔らかな、笑顔の素敵な女性陶芸家でした。作品はもちろん、その温かい人柄に惹かれて、たくさんの人が集まるのですね。この度はお時間いただきありがとうございました。(アイエスエイ取材班一同)

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